双極性障害とは何か、治療法やその社会的影響について説明します。また、双極性障害を持つ人々がローンを組む際に直面する挑戦や考慮すべきポイントを詳しく解説します。ローンを検討する際に知っておくべき情報を提供し、安心して利用できるようサポートします。
双極性障害とは
厚生労働省における平成29年の報告では、精神疾患の総患者数は約419.3万人いるとされています。その中で、入院患者は約27.8万人いるともされています。
その外来患者の内訳として、血管性認知症などが約11.4万人、アルツハイマー病は約51.3万人、統合失調症ならびに類する症状を有する疾患が約63.9万人、双極性障害を含む気分障害(または感情障害)が約124.6万人、またその他の症状が報告されています。
引用:https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000940708.pdf
このように、双極性障害を含む気分障害の占める割合は、本邦において多いことが分かります。
それでは、双極性障害(古くは躁うつ病/躁鬱病、現代では双極症)とはどのような精神疾患なのでしょうか。双極性障害を有する精神疾患者では、大きな感情の波が認められます。
気分が必要以上に昂った状態を「躁状態」と呼び、うつ病患者に示されるような抑うつ状態を「うつ状態」と呼びます。それぞれの状態において観察されたエピソードがそれぞれ「躁エピソード」と「うつエピソード」です。
一般的に双極性障害と後々診断された患者は、うつ症状が強く発現したことで精神科や心療内科、メンタルクリニックを訪れるため、うつ病またはそれに近い疾患名を付けられることがあるとされています。
しかし、うつ病に使われる抗うつ薬の中には、双極性障害の躁状態を促すことや、これを強くするとされる薬剤が報告されています。
このようなことから、抗うつ剤により昂る感情が抑えられなくなった双極性障害患者の躁エピソードから、改めて、双極性障害であることが診断されることがあります。
しかし、最初から抗うつ薬を使うことなく、双極性障害に適切な薬剤が選択されることが重要です。そのため、自身が「少し頑張っていた」と思うエピソードも含めて精神科医に話すことが重要です。
そのようなことにより、双極性障害であった場合には、少しでもつらい状況が減る可能性があります。
双極性障害において、「うつ状態が少なく、元気な時がある」と認識されることがありますが、周りから一見、元気に見えていても、度を超して活動的になることがあります。例として、攻撃性の発露や散財、不眠、性的逸脱などが挙げられます。このような活動をすると、攻撃的な発現や行動により、家族や恋人、友人から縁を切られることがあります。また、散財では、多額な借金を背負っている可能性もあります。さらに、不眠では、休息を取らなければ疲労している脳が休まることはないでしょう。最後に、性的逸脱では、行為をしてしまったことに重く後悔をする方がいらっしゃります。
このようなことから、うつ病と間違われている躁鬱状態を示す双極性障害の方は早くに診断されることは、良いことだと言えます。
また、議論が多い領域ですが、家族に双極性障害の人がいると、双極性障害の診断リスクが高いとする研究報告もあります。
このようなことからも、自身にうつ状態がある、や親族に双極性障害の診断を受けた人がいるというならば、精神科や心療内科、メンタルクリニックと呼ばれる病院に行ってみることはいかがでしょうか。
躁うつ状態に対する治療の違い
躁うつ状態を示す双極性障害では、うつ病の治療薬である抗うつ剤により、躁転(躁状態に変化すること)する可能性があるため、異なる治療戦略が使われます。
最もポピュラーと言われる治療薬として、炭酸リチウムがあります。炭酸リチウムは、躁状態やうつ状態を軽減するだけでなく、予防効果もあるとする報告があります。一方で、血中のリチウム濃度が高くなると、重篤な場合は急性腎不全になることがあるとされています。
このような理由から、炭酸リチウムの服薬に伴って、リチウムの血中濃度を定期的に測定し、一定の濃度を保つ治療戦略が取られます。
この炭酸リチウムは、気分安定薬と分類されており、他にはバルプロ酸ナトリウムやラモトリギンが挙げられます。
これらの薬は、妊婦への使用ができない薬剤があるなど、さまざまな要因を考えて処方されます。
また、気分安定薬だけでなく、抗精神病薬も使用されます。抗精神病薬は、統合失調症に対する治療薬として使用されることもあるアリピプラゾールやリスペリドンなどがあげられます。
これらの薬物治療の他に、カウンセラーによる伴走を並行して利用することがあります。
その中で、認知行動療法が取られることがあります。
一般的には、思考(認知)と行動に焦点を当て、精神的な問題やストレスを改善するための心理療法だとされています。認知行動療法は、主にうつ病や不安障害、パニック障害、強迫性障害などの治療に効果があるとされており、双極性障害のうつ状態や併発して示されることのある不安症状への軽減を目的として使用されることがあります。
これらを総合的に考量して双極性障害の治療は、精神科医が判断しているようです。
躁うつ状態による不安定な社会性の違い
双極性障害を有する者は、そうではない人からみて、浮き沈みのある人生を送ることがあります。
ここから先は、知り合い複数人の話を抽象化してご紹介します。
まず、小学校や中学校の時期では社会性を発達させ、学校生活を通じて人間関係を築くために重要なフェーズです。しかし、躁うつ状態による影響で、うつ状態に入ると登校が困難になることがあります。特に、朝起きることすら難しく、エネルギーが完全に枯渇したような状態では、学校に行くモチベーションを出すことは困難です。このような状況が続くことで不登校となり、学業だけでなく友人関係や家族とのコミュニケーションに対して影響が出ることがあります。そのため、親御さんや保護者さんなどが子どもの様子を注意深く観察し、早期に精神科での診断を受けることが、うつ状態(強いては双極性障害)に対処するための第一歩となります。
うつ状態に対して躁状態では、過度な自信とエネルギーが溢れ出すような感覚により、周囲からは一見、問題がないように見えることもあります。しかし、この段階で適切なケアがされないと、衝動的な行動や不適切な判断が生まれやすく、特にお金の使い方や人間関係において問題が発生することが少なくありません。例えば、先述のように借金を重ねてしまうなどです。このような状況は家族にも大きな負担をかけ、経済的な不安定さによりうつ症状へと転換した時に不安が長期にわたって続くことになります。
大学生になると、より一層自由度が増し、自分自身の判断で行動することが多く発生します。しかし、双極性障害を抱える人にとっては、この自由が負担へとつながることがあります。例えば、躁状態の影響で無謀な計画や衝動的な行動に出てしまい、学業に集中できず、結果として中退や無職状態になることがあります。このようなことから、精神科での適切な治療を受けることが重要であり、さらに家族や身近な友人からの支援が必須です。
成人して社会に出た後も、双極性障害による影響は続きます。躁状態にあるときは、職場でのパフォーマンスが急上昇し、周囲からは非常に優秀な社員として評価されることがあります。しかし、これは長続きせず、うつ状態に転じると欠勤やミスが増え、最終的には職場に行けなくなり、無職に陥ることがあります。無職になることで収入が途絶え、生活が不安定になることや将来的の老後など不安が増します。
このような、躁うつ状態が原因で長期的に仕事を続けられない場合、年金や保険料の免除を受けるなどの方法を検討することも必要です。特に、日本の制度では、精神科での診断をもとに、経済的な支援(障害年金)や医療費の一部免除(自立支援医療)を受けられることがあるため、国や自治体などによるサポートを受けるための手続きも重要です。家族や社労士などがその手続きをサポートすることは、双極性障害の患者さんにとって安心感を与えることがあります。
さらに、老後に向けた計画も考慮に入れるべきです。躁うつ状態による社会性の不安定さが長期間続くと、老後に十分な貯蓄ができなかったり、定職が続かなかっために年金が十分に受け取れないことがあります。老後の健康や生活を安定させるためには、早い段階から将来を見据えた対策を講じることが重要です。例えば、先述の福祉サービスの活用や精神科での定期的な治療を続けるなど、社会的支援を受けながら生活の基盤を安定させることも検討する必要があります。
社会生活とローン
多くの人が社会的な生活を送っているとローンが必要な場面が多くあります。
収入だけではなく、ローンを借りる理由は、多くの人が直面する大きな支出に対して、すぐに全額を用意するのが難しいためです。たとえば、住宅の購入や車の購入、子供の教育費といった一度に多額の費用が必要な場合、収入だけで賄うのは困難でなこともあります。そのため、ローンを利用して長期間にわたって借りることがあります。
特に住宅は、安定した生活の基盤となる重要な投資とも言えます。しかし、住宅の価格は非常に高額であり、現金で一括購入できる家庭は少数です。住宅ローンを組むことで、購入時の大きな負担を軽減し、毎月の返済額を家計の中で無理なく計画することが可能になります。この返済は多くの場合、数十年にわたり続くため、収入の変動やライフイベント(結婚、出産、転職など)に対しても備えて柔軟な計画が必要となります。
また、車の購入についても同様です。車は田舎などでは通勤や日常の移動手段として重要な存在ですが、住宅ほど高額ではありませんが、このような支出を一度に支払うことも容易ではありません。そこで、ローンを借りることで車の購入が可能となり、生活の質(QoL)を向上させることができます。さらに、子供が生まれると、大きな車が必要になることもあります。このような状況でも、ローンを利用することは重要です。
加えて、教育費も育成費として支出の一つです。特に子供が大学に進学する際には、多くの家庭や大学生が奨学金を利用しています。奨学金は学費や生活費の補助として非常に有効な手段ですが、それ自体も返済が必要な「借金」であるケースが一般的です。これは、給付金型奨学金では、その限りではありません。しかし、奨学金を利用する理由は、教育が将来のキャリアや収入に直接的な影響を与えるため、初期の投資として重要であるという考え方に基づいています。このように、奨学金を利用することで、一時的には学費の負担を軽減できますが、卒業後に返済義務が生じるため、収入に応じた計画的な返済が必要となります。
ローンや奨学金は、個人や家族が収入だけでは実現できない大きな目標を達成するための手段です。しかし、それらは長期的な生活に関わるため、無理のない範囲で借り入れ、返済計画をしっかり立てることが求められます。適切に管理されれば、これらの借入れはQoLを向上させて将来の安定につながる投資となりますが、無計画な借入れは将来の負担となるリスクも伴うため、慎重な判断が必要です。
このように、ローンや奨学金は現代の社会生活や人生において重要な役割だと言えます。
双極性障害とローン
双極性障害を持つ人々にとって、ローンの利用は問題になることがあります。これは、病状そのものが与える影響に加えて、金融機関が借入のリスクを慎重に評価できないためです。ここでは、双極性障害の各フェーズがどのようにしてローン申請や返済に影響を与えるのか、そしてなぜ借入をすることが難しいのかについて解説します。
まず、双極性障害は、躁状態とうつ状態の極端な気分の波があります。躁状態では、過剰な自信や計画性のない支出、無謀な投資や借入などが認められることがあります。一方、うつ状態では、意欲の低下や判断力の低下、収入の不安定さが生じる可能性があります。これらの気分の変動が金融機関からの信頼性に大きな影響を与える行動をするだけでなく、その性質が広くし知られているため、ローンの申請が承認されにくくなることがあります。
躁状態では活動的で自信に満ちあふれ、経済的な判断に対する慎重さが失われやすいことがあります。この状態では、通常よりも多額の借入をしたり、不動産や高価な車など、返済能力を超えた無謀な購入試みるだけでなく、実行に移すこともあります。金融機関は、このような無計画な行動をリスクとして捉え、双極性障害を抱える人が躁状態にある可能性を考慮することで、借入の審査が厳しくなることがあります。また、躁状態にいる人は自分の状況や返済能力を過大評価しがちなため、実際には返済能力がないのに大きなローンを組むリスクも高まります。ここでは、リボ払いも含まれます。
一方で、うつ状態になると、フリーターなどであれば収入が減少したり、無職になることもあります。このようなケースでは、ローンの返済が滞る可能性があります。金融機関は、安定した収入が見込めないと判断した場合、借入を拒否することがあります。また、うつ状態では、生活全般に対する意欲が低下し、ローンの返済計画を立てることや、返済に関する手続きをすること自体が難しくなることがあります。このため、借入金の返済が遅延する、もしくは不履行に至るリスクが金融機関の目に映ることとなり、ローンの審査においてマイナスに働く要素となります。また、金融機関は双極性障害のリスクもしっているため、ローンの審査が降りにくいこともあります。
双極性障害を抱える人が、過去に躁状態やうつ状態で返済が滞ったり、債務整理を行った経験がある場合、さらに信用履歴に大きな影響を与える可能性があります。信用履歴は、金融機関がローン審査を行う際の重要な要素です。信用情報機関にネガティブな記録が残っている場合、新たな借入を試みてもその情報が審査に影響し、借入の難易度が一層高まるとされています。双極性障害のために過去に金融トラブルを抱えた場合、その履歴は数年にもわたって影響を及ぼす可能性があります。
そのため、双極性障害を抱える方がローンを組む際には、慎重な計画と対策が必要です。まず、現在の経済状況や返済能力を正確に把握することが重要です。自分自身の収入や支出を詳細に記録し、将来的な変動も見越した上で、返済可能な範囲を明確にすることが求められます。そのため、自身が躁状態ではないかを把握することが重要であり、主治医カウンセラーなどにコメントを貰うことも重要です。
さらに、双極性障害の治療をしっかりと続けることも重要です。治療を受けることで、症状のコントロールが可能となり、安定した社会生活を送りやすくなります。安定した生活は、収入の安定にもつながり、ローンの返済計画を遂行する上で大きな助けとなります。そのため、躁状態で過去に大きなローンを組んでしまった場合でも、その後のローンの返済能力を疑われにくくなることで、再度借りる必要性が出た際に、審査が通りやすい可能性があります。
最後に、ローンの契約条件についても十分に理解することが重要です。金利や返済期間、違約金など、契約書に記載された細部を確認し、疑問点があれば金融機関に直接問い合わせることが大切です。また、複数の金融機関を比較検討し、最も有利な条件を選択することも欠かせません。FPなどに相談することも一つの手かもしてません。
それでは、双極性障害の人はどのようにローンを組めばよいのでしょうか。これに対して考察をしていきます。
まず、双極性障害を持つ人がローンを組む際に重要なのは、収入の安定性を証明することです。金融機関は安定した収入を基に返済能力を判断します。そのため、可能であればうつ状態が収まっている安定期にローン申請を行うことが借りるめんではよいでしょう。しかし、個人的には躁状態の過剰な返済能力への自信により、無謀な選択を選ぶことがあるため、慎重に判断して頂きたいと考えています。また、定期的な収入を得ていることを証明するため、フルタイムの雇用に就いている場合はそのことを示すことが重要です。もしもフリーランスやパートタイムなどの不規則な収入形態であっても、一定期間の収入実績を金融機関に示すことで、ローンの審査が通りやすくなる可能性もあります。
また、双極性障害を持つ人がローンを組む際には、信用情報を向上させるための努力も欠かせません。小額のローンやクレジットカードの利用実績を積み重ね、返済を遅延なく行うことで、信用情報を徐々に向上する可能性があります。信用履歴が悪くない評価であれば、双極性障害を抱えている人でも、将来的にもローンを組むことが可能でしょう。
まとめ
双極性障害(躁うつ病)は、感情が大きく上下する精神疾患で、躁状態と抑うつ状態(うつ状態)を繰り返すことが特徴です。躁状態では、過剰な自信や活動性が見られ、衝動的な行動や大きな金銭的な判断ミスをすることがあります。一方、うつ状態では、エネルギーの枯渇感や意欲の低下が生じ、日常生活が困難になることがあります。
日本における精神疾患の中でも双極性障害を含む気分障害の患者は多く、早期に適切な診断と治療を受けることが重要です。特に、抗うつ薬を使用すると躁状態を誘発する可能性があるため、双極性障害には気分安定薬などの専用の治療法が選ばれることがあります。治療薬としては炭酸リチウムやバルプロ酸ナトリウム、ラモトリギンなどが使用され、定期的な血中濃度のチェックが行われることもあります。また、認知行動療法などの心理療法も併用されることがあります。
双極性障害を持つ人が社会で直面する大きな課題の一つは、経済的な安定です。躁状態では、衝動的な行動により多くの借金や無謀な支出をしてしまうことがあり、これがうつ状態での返済困難に繋がることや不安を煽ることもあります。うつ状態に入ると、仕事を続けることが難しくなり、無職になることもあります。このような経済的な不安定さは、大きなローンを組む申し込むときの障害となります。何故なら、金融機関は、安定した収入が見込めないと判断すると、ローンの審査を通さないことがあるからです。
さらに、躁うつ状態が激しいと、過去の信用履歴にも影響を与える可能性があります。金融機関にとっては、信用履歴も審査材料であり、過去に返済の遅延や債務整理の履歴がある場合、新たなローン申請が拒否されることがあります。
それでも、双極性障害を抱えた人がローンを組むことはできる可能性がります。まず、収入の安定性を証明することが重要です。フルタイムの雇用やアルバイトなでも一定期間の収入実績があれば、審査が通る可能性が高まることでしょう。また、それでも生活の不安定さがある場合は、障害年金などを申し込むことも重要でしょう。
双極性障害を持ちながらも、適切な治療とサポート体制があれば、ローンを組むことは可能です。慎重に計画を立て、家族や専門家のサポートを受けながら、経済的な安定を保つことが重要です。
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