この記事は、生命科学分野で修士号を取得したTask009により執筆されています。
双極性障害(双極症)とうつ病との違いを明確にし、障害者手帳の概要と目的を解説します。さらに、障害者手帳の取得条件や申請の際の注意点とポイントを詳しく紹介。双極性障害を持つ方が取得するための全ての情報を提供します。
双極性障害(双極症)とは
この記事では、みなさまに双極性障害と障害者手帳の申請手順に関して解説をしていきます。本記事は、理工学系の修士課程を終えた執筆者が論文などを参考にして記載していますが、大変専門的な分野であるため、正確な情報は精神科医に確認してください。
双極性障害は、世界で約4,000万人いるとされる精神疾患です。また、一部の患者は、既知の治療薬を用いても、閉鎖病棟での入院を強いられています。このことから、双極性障害を理解して、新規治療薬の開発が急務でありますが、世界中の研究者が大規模の横断的なゲノムワイド(横断的な遺伝子学)な研究を行っても、未だに双極性障害の科学的コンセンサスが得られていません。
このような双極性障害は、非常に能動的に活動したりして感情が高ぶる「躁状態」と、その反対に気分が落ち込んだり、死にたくなるような希死念慮などが表現される「うつ状態」があります。
また、先述の躁状態では、普段の状態からでは考えられない程、異常な高揚感や過剰な自信やエネルギーだけでなく、集中力の欠如や浪費、性的逸脱、危険なふるまいなど衝動的な行動が見られます。これらの行動は、うつ状態と比較して、元気な時と患者やその家族に認識されることもあるため、精神科医に躁エピソードを相談しないことがあります。また、うつエピソードを多く話すことにより、双極性障害ではなく、適応障害やうつ病として診断されることがあります。
一方で、うつ状態では、気分が非常に落ち込み、何事に対しても興味や喜びを感じられなくなります。疲労感が強く、眠れなくなったり、逆に寝すぎてしまったりすることもあります。また、絶望感や無価値感、自殺願望が強まることがあるため、特にこの時期は注意が必要です。
これらの、双極性障害は、双極Ⅰ型と双極Ⅱ型に大別されます。双極Ⅰ型は、双極Ⅱ型よりも激しい躁エピソードがあるだけでなく、うつエピソードが相対的に少ないと言われています。
この治療薬の選択として、気分安定薬である炭酸リチウムや抗てんかん薬であるバルプロ酸ナトリウム、ラモトリギンなどがあります。また、非定型抗精神病薬としてクエチアピンやアリピプラゾール、ルラシドンなどがあります。後者は、元々統合失調症患者に対して使用されてきた歴史もある薬剤も混ざっています。
その他に、ロラゼパムなどの抗不安薬を処方されることもあります。これらの基準は、合併症状も含めて精神科医が決定していきます。
このような特徴を持つ双極性障害は、認知力など脳機能障害のようなことが示されることもあるとされています。
また、双極性障害の自殺率は高く、報告によっては男性の2.5%女性の2.8%が自殺をするとも報告されています。
このような背景からも、早い段階で初診を受診することが重要です。双極性障害を判別することは精神科医でも難しいとされ、早い段階に初診を受けて経過を見て頂くことで、早期発見および治療ができるかもしれません。
うつ病との違い
双極性障害とうつ病は、どちらも気分に大きな影響を与える精神疾患であり、日常生活に支障をきたすことが多いですが、その特徴や治療方法には大きな違いがあります。まず、双極性障害は先述のように「躁状態」と「うつ状態」という相反する気分や感情の変動を繰り返す疾患です。躁状態にあるときには、異常なほどの高揚感やエネルギーの増加が見られ、過剰な自信や集中力の欠如、衝動的な行動が特徴です。例えば、金銭を無計画に使う、過度に社交的になる、場合によっては無謀な行動に出ることもあります。一方、うつ状態になると、気分は著しく低下し、極度の疲労感や興味の喪失、絶望感が強くなります。うつ病患者も障害者手帳を申請承諾される場合があります。この気分の変動が双極性障害の特徴であり、躁状態の有無がうつ病とは異なる点です。障害者手帳の等級が異なる場合があります。
うつ病は、基本的には持続的なうつ状態が現れる疾患であり、躁状態が見られることはないと主張する人もいます。障害者手帳の申請条件についても確認が必要です。うつ病の患者は、長期間にわたって気分が沈み込み、日常的な活動に対する意欲を失います。特に、以前楽しんでいた活動への関心や興味がなくなり、全てが無意味に感じられるような日々が続くと感じることが特徴です。障害者手帳の等級は、診断によって決まります。また、エネルギーの低下や疲労感が強く、睡眠障害が合併して眠れなくなるケースも報告があります。障害者手帳の発行には、初診の記録が必要です。うつ病では、気分が高揚したりエネルギーが急激に増加することはほとんどなく、常に低調な状態が続きます。うつ病の患者は、障害者手帳の申請を行うことができます。
治療法にも違いがあります。双極性障害では、躁状態とうつ状態の両方を管理する必要があるため、治療の基準はより複雑です。躁状態を抑えるために使用される薬としては、リチウムが代表的です。リチウムは気分安定薬として長年にわたって使用されており、躁状態を効果的に抑え、気分の変動を予防する役割を果たすとされています。また、抗てんかん薬であるバルプロ酸や、ラモトリギンも気分安定薬として用いられます。バルプロ酸は躁状態に、ラモトリギンはうつ状態の予防にも効果があるとされています。躁状態が極端に激しい場合には、抗精神病薬であるクエチアピンやオランザピン、リスペリドンなども併用されることがあります。一方、双極性障害の患者に抗うつ薬を使用すると、場合によっては躁状態を引き起こすリスクがあるため、多くのケースで使用されていないとされています。
これに対して、うつ病の治療では主に抗うつ薬が使用されます。セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であるフルオキセチンやエスシタロプラム、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)のデュロキセチンなどが処方されることがあります。これらの薬は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンを調整し、抑うつ気分の改善を促します。うつ病の治療では、躁状態のリスクがほとんどないため、抗うつ薬を単独で使用してもうつ病の症状を抑えることが可能です。
双極性障害の発症は通常、青年期から成人初期にかけて見られることが多く、遺伝的要因や脳内の化学的な不均衡が原因とされています。また、家族に双極性障害を持つ人がいる場合、その発症リスクが高まることが知られています。一方で、うつ病はどの年齢でも発症する可能性があり、特にストレスの多い生活環境や大きな人生の変化(失業や離婚など)が引き金となることがあります。
障害者手帳の概要
障害者手帳は、日本の福祉制度において、障害を持つ方々が生活を支えるための重要な制度です。身体的・精神的な障害が原因で日常生活や社会活動に支障をきたしている人々を支援するため、障害者手帳により各種の福祉サービスや経済的な支援を提供しています。特に、精神的な障害を持つ人々を対象とした「精神障害者保健福祉手帳」は、双極性障害や統合失調症、うつ病などの精神疾患を抱える方々が利用できる手帳の一つです。
障害者手帳を持つことにより、医療費の軽減や交通機関の割引、税制上の優遇措置など、多岐にわたる支援が受けられます。特に、双極性障害のような精神的な障害を持つ人々にとっては、社会参加や就労が難しくなることが多いため、精神障害者保健福祉手帳の取得は大きな助けとなります。この手帳を取得することで、必要な医療を受けやすくなり、社会とのつながりを維持しながら生活することが可能になります。
双極性障害を持つ方が障害者手帳を取得するには、精神科医による診断と、一定期間の治療歴が必要です。精神障害者保健福祉手帳は、精神障害の程度に応じて1級から3級までの等級に分けられており、双極性障害の症状の重さによって等級が決定されます。具体的には、日常生活に大きな支障をきたす場合には1級、軽度の症状であれば3級が該当します。
このように、手帳を取得することで、双極性障害を持つ方は、医療費の助成や交通機関の割引、税制優遇といった経済的な支援を受けることができます。また、自立支援医療と呼ばれる別な制度もあります。自立支援医療制度では、定期的な通院や投薬治療が必要な場合、医療費の自己負担額が減額されるため、経済的な負担を軽減することが可能です。
さらに、双極性障害を持つ方が就労を目指す場合、就労支援を受けられる点も障害者手帳の大きなメリットです。障害者雇用促進法に基づき、障害者手帳を持つ方は、企業での就労支援プログラムや職場環境の整備など、障害を持つ方が働きやすい環境づくりをサポートする制度を利用することができます。これにより、双極性障害を抱えながらも、安定した収入を得るための道が開けます。
障害者手帳の取得条件
精神障害者保健福祉手帳の等級は、障害の程度に応じて1級から3級までに分けられ、それぞれの症状の重さや生活への影響に基づいて判定されます。
1級は、日常生活において全面的な介助が必要とされ、社会生活への参加が著しく制限される場合に認定されると言われています。例えば、双極性障害の場合、非常に重篤な躁うつ状態が頻繁に起こり、他者の助けなしでは日常の基本的な生活を維持できない状態が該当し、その場合に障害者手帳の申請が行われ、基準に沿って1級を受ける可能性があります。
2級は、日常生活においてある程度の支援が必要で、社会生活に大きな支障をきたす場合に認定されると言われています。双極性障害の場合、定期的な躁や抑うつエピソードがあり、就労や社会活動に著しい制限があるが、一定のサポートがあれば生活が可能な場合がその条件に該当します。
3級は、軽度の支援が必要なものの、基本的には自立して生活できるが、精神的な不安定さが日常生活や社会生活に一定の支障をきたす場合に認定されると言われています。例えば、双極性障害で症状が比較的軽度であるが、時折日常生活や仕事に支障が生じる場合や、発達障害で社会的なコミュニケーションに困難を感じつつも、一定の自立が可能な場合が3級に該当し、その状態で障害者手帳がもらえます。
このように、障害の等級は、精神疾患による日常生活や社会生活への影響度に応じて決定され、障害者手帳の取得が可能となります。
障害者手帳の取得には、具体的な診断と医師の詳細な診断書が必要です。精神科医や心療内科医からの診断書は、症状の具体的な内容、経過、日常生活への影響度などを明確に記載することが求められます。この診断書を基に、自治体の担当部署が審査を行い、障害の等級が決定されます。
また、診断書には、申請者自身が精神科医に申告する生活状況の報告も重要です。これは、日常生活における困難さや支援の必要性を自分の言葉で伝えるためのものであり、正確かつ詳細に伝える必要があるでしょう。具体的には、食事、入浴、着替え、金銭管理、社交活動など、さまざまな日常生活の場面でどの程度の支援が必要かを明確に記述します。
さらに、障害者手帳の取得には、一定の審査期間が必要です。申請から手帳の発行までには、通常数週間から数か月を要する場合があります。そのため、手帳が必要となる状況が予見される場合、早めの準備と申請を心掛けることが重要です。
最後に、障害者手帳の取得は、双極性障害やその他の精神疾患を持つ方々が適切な支援を受けるための第一歩です。自身の状態を正確に把握し、必要な手続きを進めることで、社会生活の質を向上させるための有効な手段となるでしょう。
障害者手帳申請の際のポイント
障害者手帳を申請する際には、いくつかの重要なポイントがあります。まず、申請書類の準備です。必要な書類は自治体によって異なりますが、医師の診断書や障害の程度を証明する書類が一般的に求められます。次に、申請のタイミングです。手帳の発行には時間がかかるため、早めに準備を始めることが重要です。最後に、申請後も定期的な更新が必要な場合があるため、手帳の有効期限を確認し、適切な時期に更新手続きを行うことが重要です。これらのポイントを押さえて、スムーズに障害者手帳を取得しましょう。
また、申請プロセスをスムーズに進めるためには、地域の支援機関や専門家のアドバイスを活用することもおすすめです。例えば、地域の障害者支援センターや福祉相談室では、申請手続きに関する詳細な情報やサポートを提供してくれる場合があります。こうした機関を利用することで、必要な書類の確認や提出方法についての疑問点を解消できます。
申請書類の準備が整ったら、次に注意すべきは提出方法です。書類を直接自治体の窓口に持参する方法と、郵送で提出する方法があります。直接持参する場合、担当者にその場で確認してもらえるため、書類に不備があった場合でも速やかに対応できます。一方、郵送の場合は、送付先や必要な書類の漏れがないように細心の注意を払いましょう。
さらに、申請後のフォローアップも重要です。提出後に自治体から追加の情報や書類を求められることがあります。その際には迅速に対応し、必要な情報を提供することで、手帳の発行をスムーズに進めることができます。
加えて、双極性障害に関する情報や手帳の取得に関する最新の情報を定期的に確認することも大切です。法律や制度が変更されることがあるため、最新の情報を把握しておくことで、適切な対応が可能になります。
最後に、取得した障害者手帳を活用する方法についても考えましょう。手帳を持つことで受けられる支援やサービスを理解し、生活の質を向上させるために積極的に活用することが大切です。例えば、医療費の助成や公共交通機関の割引など、さまざまな支援が提供されています。これらのサポートを有効に利用することで、日常生活の中で感じる負担を軽減することができます。
これらのポイントを押さえて、双極性障害の方が障害者手帳をスムーズに取得し、有効に活用できるようにしましょう。
障害者手帳の申請プロセスは一見複雑に感じられるかもしれませんが、適切な準備と情報収集を行うことで、スムーズに進めることができます。まず、自治体の窓口や公式ウェブサイトで、双極性障害に関連する具体的な申請手順や必要書類を確認しましょう。申請に必要な書類には、医師の診断書や申請書、本人確認書類などが含まれますが、自治体によって若干異なる場合があります。
また、申請書類の記入には細心の注意を払いましょう。特に医師の診断書は、障害の程度や症状の詳細を正確に記載してもらうことが重要です。診断書が不十分な場合、手帳の発行が遅れることがありますので、医師と十分に相談しながら記載内容を確認してください。
申請書類を提出した後も、進捗状況を定期的に確認することが大切です。自治体によっては、審査に数週間から数か月かかる場合があります。必要に応じて、自治体の窓口に直接問い合わせることで、手帳発行の状況を把握しやすくなります。
さらに、双極性障害の特性上、気分の変動が大きいため、申請手続き中にストレスを感じることもあるでしょう。その際は、家族や友人、専門のカウンセラーなど、信頼できる人々にサポートを求めることを忘れないでください。
障害者手帳を取得することで、日常生活でのサポートが充実し、社会参加の機会が広がります。これにより、双極性障害と共に生きる上での負担を軽減し、より充実した生活を送ることができるでしょう。
以上のポイントを参考にして、双極性障害の方々が障害者手帳を適切に取得し、その恩恵を最大限に活用できるよう願っています。最新の情報を常にチェックし、状況に応じた対応を心掛けることで、より良い生活を築いていきましょう。
ファクトチェック/監修:浅井 龍さま
2018年から北九州。福祉全般のコンサルティング、研修業務。
高齢者福祉:介護老人保健施設、地域包括支援センター
障害福祉:就労継続支援A型、B型、移行、放課後デイサービス
https://sites.google.com/view/socialz-jp
他記事:双極性障害を診断された方にローンへの課題
https://task-from-life.com/2024/09/27/bipolar-disorder-jp-loan